仏教豆知識教室

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大晦日になりますとテレビなどで「除夜の鐘」を鳴らす風景が見られますが、「除夜の鐘」にはどんな意味があるのですか?

大晦日の夜に撞かれる「除夜の鐘」の起源は、中国の宋の時代に始まり日本では鎌倉時代以降、特に禅宗寺院で中国の寺院にならい朝暮の二回、百八つの鐘を撞くようになり、やがて室町時代頃から大晦日にだけ撞くようになったものといわれています。

【除夜】
 まず「除夜」とは、夜を除くと書きますが、ここでいう「夜」とは暗闇の真っ暗で何も見えない状態を表し、転じて「物事に明らかでない」「暗闇に覆われて真実の姿が見えない無明(むみょう)」を意味します。
 さて、撞く回数については諸説があります。一般的に、人間の煩悩(捨てがたい感覚と感情)が百八つあるから鐘の清らかな音で煩悩の一つひとつを打ち浄めるというのが広く知られておりますのでその一例をご紹介します。

【百八つの煩悩】
 人間には感覚を生じる眼・耳・鼻・舌・身・意の六つの器官『六根』があります。そして、眼が見る「色」耳で聞く「声」鼻で嗅ぐ「香」舌が感じる「味」体が感じる「触」意識する「法」といった六つの器官にはそれぞれ固有の知覚がありこれを『六塵』とも『六境』ともいいます。
 また知覚が生じた『六根』は物事に対し、「好意」「悪意」「平意(どちらでもない)」の三つの感情『三不同』を生じますので、『六根』×『三不同』=十八の煩悩となります。
 さらに『六塵』には、「楽」「苦」「捨(苦しくもなく楽しくもない)」といった三種の心の働き『三受』も生まれますので『六塵』×『三受』=十八の煩悩となり、十八+十八で三十六の煩悩となります。
 〈他説では、ここで『六根』×『三不同』×二(「染(迷い)」と「浄(迷いのない状態)」という二種の煩悩〉という計算もあります〉
 そして、この三十六の煩悩が過去・現在・未来の『三世』に渡って生じるという考え方から三十六×三で百八の煩悩となるとされています。

【百八尊の諸仏諸菩薩】
 そしてこれを救うために仏さまや菩薩さまの百八尊が、新年を迎えるにあたり私たちの百八の煩悩を取り除いて下さり、安穏な気持ちで新しい年を迎えることができるようにという意味が込められ百八つの鐘を叩くといわれております。

【鐘を撞く作法】
 まず鐘を撞く前には鐘に向かって合掌します。百八回のうち百七回は旧年(十二月三十一日)のうちに撞き、残りの一回を新年(一月一日)に撞きます。
 叩き方にも「弱く」と「強く」を交互に繰り返し、弱く五十四回、強く五十四回撞いて百八つの鐘の音を響き渡らせる作法があります。

【平和の証】
 今でこそ平和な時代で、「除夜の鐘」を各地で聞くことができるのですが、戦争中は、日本では鉄が足りなく梵鐘などを軍に持って行かれたお寺も多かったようです。そう考えますと今、聞くことができる鐘の音は平和の証と申せましょう。

 埼玉県内のお寺でも「除夜の鐘」を撞かせて頂けるところがあるようです。また、十二月三十一日、各お寺では「歳末報恩会」または「大節会(だいせちえ)」と称し、年内の安泰を感謝し、煩悩の焔(ほのお)を滅除する法要も行われているとお聴きします。お題目の信仰をもって「除夜の鐘」とともに、今年、一年の心の垢を落とし、来年への希望をお祈りしてみてはいかがでしょうか。(平成19年12月1日発行 弘道第30号より)

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